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夏の読書

 夏に風邪をひいてしまい、外出する機会があまりありませんでした。
 ──海へ行きたい!
 そう思いつつ、布団の中で本を読む休日・・・。
 で、何を読んでいたか。
 そう、旅の本が多いです。しかも現実ばなれした外国の旅!
 それがまだ尾を引いていて、いま読んでいるのはギッシングの『南イタリア周遊記』(岩波文庫)。

■ 『エスペラント』(田中克彦/岩波新書)
 言語の本質を追究する言語学の歴史をたどりながらエスペラントを語る。

 かつてことばは神がつくったものとして神聖にして不可侵であったらしい。それをやがて近代ヨーロッパでは神ではなく自然が創造したものだとし、19世紀の自然科学の時代に、自然科学として言語学が栄える。神が自然に代わっただけで、人間の意志にかかわりのない「不可侵」は同じだった。

 やがてソシュールが現れてその考え方は変わってくる。ソシュールは言語は「制度だ」とみなしたらしい。すなわち人間社会の制度。ようやく言語を人間の世界に取り戻したのだ。また、「不完全な」言語を「完全な」論理を表すものに改造しようという動きも出てきた。その流れのなかで「自然」言語に対して「人工」言語(あるいは「計画」言語をつくろうという運動が出てきた。その一つがエスペラントであった。

 エスペラント自体にはあまり興味はなかったが、石原吉郎などについて読んでいるときに、かれらがエスペラントを話した、ということで、多少興味を持ちはじめた。現在のエスペラント大国は中国らしい。ポッドキャストにもエスペラントの放送があり、中国のウェブサイトでもエスペラントを聞くことができる。

 しかし、たとえば静岡の丸善に行く。外国語コーナーを見ると、エスペラント語に関する本は一冊もないみたい。もちろん辞書もないようだ。丸善には膨大な英語の本があり、外国語には古典ギリシア語の教本までありながら、エスペラント語は・・・。もし教本などを手に入れたければ注文するしかないようだ。

■ 『総員玉砕せよ!』(水木しげる/講談社文庫)
 8月12日(日)の犬HK総合テレビの午後9時から1時間半放映した『鬼太郎が見た玉砕〜水木しげるの戦争〜』のマンガ原作。というか、テレビのは戦後漫画家になってからの話をまじえたもの。一将校の無理な玉砕命令が全軍に伝わってしまった後、生き残っ(てしまっ)た部下たちは後方の味方から「刺客」を送られる。なるほど「玉砕」とはそういうことか、と思った。玉砕という美名によって、生き残った者は軍紀を保つために味方に殺される運命にあるということ。しかも、幹部や参謀などはそのような「玉砕」においてさえも、事後の処理のために生き残るものらしい。

■ 『プーリアへの旅』(木下やよい/小学館/1785円)
 『南イタリアへ!』(陣内秀信/講談社現代新書)を読み、南イタリアに興味を持った。陣内が若いころに惹かれて、第二の研究対象にしようと思ったのはこの南イタリアのプーリア地方のチステルニーノだったらしい。真っ白い町のよう。

 『プーリアへの旅』で知ったこと。
 イタリアの「かかと」の半島がサレント地方といい、そのなかにグレチーア・サレンティーナと呼ばれる地域があり、そこでは「グリーコ」という(昔の)ギリシア語が今も話されているとのこと。昔って、あの古典古代の大ギリシアのころのギリシア語?プラトンやピタゴラスもこのあたりに縁があったらしいが、その人たちが話していたギリシア語?とはいえ、いまは漁師の親父さんたちが話しているだけのようだが。ちょっと想像がつかない。

 アルベロベッロで有名な「トゥルッリ」はサレント地方やその上のムルジェ地方一帯に見られること。

 ムルジァ・デイ・トゥルッリ地方のイトリアの谷の周囲に、アルベロベッロ、ロコロトンド(円い町)、マルティーナ・フランカ(レッチェに影響されたバロック様式の町)、チステルニーノなどのみどころのある町があること。

 プーリア州にはマッセリーアと呼ばれる「農の館」がたくさんあること。なんだか西部劇に出てくるような地主の館。

 ムルジェ地方にカステル・デル・モンテとよばれる不思議な八角形の城があること。ニーチェがダ・ヴィンチにたとえた神聖ローマ皇帝フェデリコ二世による建造の由。

 ムルジェ地方のアルタムーラにはクラウストロと呼ばれる行き止まりの路地裏があること。ユダヤ人グループが住んでいたクラウストロ・ジュデッカなど。なんだか、スペインのコルドバのよう。

 プーリア地方に接する内陸部にマテーラという奇観の町があること。そこのサッシとよばれる洞窟住宅・教会地帯は、いまでは世界遺産に登録されているが、かつてはその赤貧から「国の恥」とされていたという。カルロ・レーヴィが『キリストはエボリにとどまりぬ』という書物でその様子を描いた由。

 マテーラを描いた映画は『奇跡の丘』(ピエール・パオロ・パゾリーニ/1964)、『イタリア式奇跡』(フランチェスコ・ロージ/1967)、『エボリ』(同左/1979)、『太陽は夜も輝く』(タヴィアーニ兄弟/1990)、『パッション』(メル・ギブソン)。

 サレント地方伝統の大衆音楽と踊りに「ピッツィカ」というものがあること。ピッツィカ・タランタータはタランティズモという精神錯乱の現象の治癒にむすびつくもの。求愛のダンス「ピッツィカ・デ・コーレ」や決闘のダンス「ピッツィカ・スケルマ」というのもある。このピッツィカについてはエドアルド・ウィンスピアという監督が『ピッツィータ』(1996)、『血の記憶』(2000)に描いている。この監督はまた『トニオの奇跡』(2003)で有名。

 オートランドにはビザンチン様式の教会がいまも残っていること。かつてはイタリア最東端の町としてギリシア文化が栄えていたが、1480年オスマン・トルコによって町が徹底的に破壊された由。

 『南イタリアへ!』(陣内秀信/講談社現代新書)も読了。これと並べて読むとおもしろい。

■ 『風琴と魚の町・清貧の書』(林芙美子/新潮文庫)
 「風琴と魚の町」以外でよかったのは「牡蠣」。主人公はきまじめで、うだつのあがらない、生き方のへたな職人。ハッピーエンドではない。「耳輪のついた馬」は「風琴・・・」のような小さなころからの自伝的な小説。初期の短編が多い。昔の旺文社文庫にあった『風琴と魚の町 他九編』の方が短編の内容は充実している。

■ 『プラハアート案内』(皆川明/エスクァイア マガジン ジャパン)
 プラハの映画製作、アニメ製作情報、人形劇情報、アート情報が豊富。写真家ヨゼフ・スデクのアトリエなどへ行ってみたい。絵本作家ヨゼフ・パレチェクの絵本も見てみたい。邦語になっているのは『おやゆびひめ』(MKインターナショナル/1680円)など。

 社会主義国時代に芸術・映画・演劇部門は国家が支えた反面、思想的な抑圧もあった。前身が国立の絵本出版社であったアルバトロス社。テレビで40年以上もつづくテレビ・アニメのヴェチェルニーチェク。「ヨーロッパのハリウッド」と呼ばれるチェコ映画随一のスタジオ「バランドフ撮影所」と隣接する映画スタジオ「クラートキー・フィルム・プラハ」でアニメーション化されたトミー・ウンゲラーの『すてきな三人ぐみ』は観たことがある。

 それからチェコ・ビール。ひとりあたりのビール消費量が世界一。日本の4倍だという。世界の9割以上をしめるピルスナータイプのビールの発祥の地がチェコ。伝統的な材料と製法。いくら飲んでも二日酔いしないという。ジョッキ一杯が100円から130円。伝統を守っている市内のビアホールは『ウ・フレクー』(元修道院ビール)、『ストラホフ』修道院ビール。ピルスナー・ウルケルやブドヴァル、ベルナルド(特にスヴァーテチュニー(祝祭用というブランド))はプラハではなく他の地域のものだが、お薦めという。

 チェコアニメに関するお店は東京・渋谷の『ano』。渋谷1─20─3 03─3407─6560。http://www.ano-web.com/(見たら、移転するためしばらくお休みの由)。

■ 『アテネ色の旅物語』(近藤まさたろ/東京書籍)
 写真が豊富できれい。知らないことばかり。ナイキとはニケのこと。エルメスもヘルメス。グリコも「甘い」というギリシア語。自己主義・保守主義のギリシア人精神。ヒオス島の虐殺事件とマスティア(乳香)。観光地化されないエーゲ海の小さな島々をめぐる話などなど。

 クレタ島のミノタウロスを倒したテーセウスの父アイゲウスが息子が死んだと勘違いし、絶望して海に身を投げたという。そこからその海を「アイゲウス」つまりエーゲ海と呼ばれるようになった由。

 遺跡を巡るには春がいいという。夏はものすごく混むらしい。エーゲ海でいちばんの島はやはりサントリーニ島とミコノス島だという。しかし、彼はケア島、レロス島、ミロス島、リムノス島などのあまり人気(ひとけ・にんき)のないひなびた島を訪ねる。古代の遺跡にはあまり関心はないらしい。遺跡として関心があるのはパルテノンだけみたい。ギッシングの『南イタリア周遊記』とは対照的だ。ギッシングの方は古典古代の文化の残滓と遺跡にしか興味がないみたい。
mojabieda * 読書 * 08:13 * comments(0) * trackbacks(2)

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