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菅原克己全詩集



 『ここが家だ──ベン・シャーンの第五福竜丸』の著者アーサー・ビナードの書『出世ミミズ』(集英社文庫)のなかに詩人・菅原克己の詩が出てくる。奥さんとの食卓での詩(ただし断片)。いい詩だなあと思う。さらにビナードの書『空からきた魚』(集英社文庫)を読む。「ローマの休日、調布の平日」のところ。詩人・菅原克己が調布市の佐須町(さずまち)に暮らしたとある。ビナードは佐須町へ奥さんのミツさんに会いに自転車で行く。2人のさりげない会話がいい。「ローマ・・・」を読むためにこの書と出会ったのではないかと思った。

 以前、高田渡の「ブラザー軒」をユーチューブで聴いて感動。いい歌だなと思った。この詩が実は菅原克己の詩だった。

 結果、わたしは『菅原克己全詩集』(西田書店)を買った。値段は言わない。

 淡いパステルカラーのカバーの、分厚いすてきな本だった。帯には「事大主義、深刻、見せかけ、難解、それがいちばん嫌いだったのでぼくは詩人になったはずだ」とある。帯の詩は「ヒバリとニワトリが鳴くまで」のなかのことば。この詩の詞書(?)もけっさく。「ゆうべは酔っぱらって、しきりに何か書いていたらしい。目を覚ますと、この紙片がおいてあった」とある。その13と14番を引用してみる。

 どんなに忍耐強く、
 小さく、黙って、
 人は生きてきたことだろう。
 となりのおじさんは
 こどもと二人ぐらしで、
 勤めが終ると
 こどものために市場で
 魚や大根を買って帰る。
 道で出会うと
 大根を振りながら笑う。
 ぼくが詩を書くのは
 まさしく、
 そのことが詩であるからであって、
 詩が芸術であるからではない。

 きのう、
 さわやかな目覚めに
 わが家に朝陽がさしているのを見た。
 それから、
 かみさんが野菜を切る音を聞いた。
 ぼくはささいなことが好きだ。
 くらしの中で
 詩が静かに不意打ちのように
 やってくるというのは
 ほんとうだ。

 菅原克己が亡くなってすでに20年。ビナードの書から奥さんのミツさんはまだまだ健在だと思っていた。ところが詩集の年譜を見てびっくり。7年もまえに自宅が全焼して亡くなっていた。ビナードはいつ奥さんと会ったのだろう。

 なんと詩集の中にある栞に、ビナードと高田渡が出てくるではないか。奥さんが亡くなったときの様子も。ビナードのは『出世ミミズ』の文章がそのまま載っている。高田渡のはインタヴュー。しかも例の「いせや」で。かれは飲んでいただろうな。

 詩集のなかの「山小屋の夜」という詩にわたしの大好きなイタリア映画『木靴の樹』のなかに出てくるらしいことばが引用されている(ただし詩集の注には「木靴の木」とあって誤植だろうか。あえてそう訳したのだろうか)。

 トウネ、トウネ、
 おおかみのとこへ走れ、
 ぼくはここにいる

 このことばは映画のどこに出てくるのだろう。



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mojabieda * 読書 * 19:15 * comments(28) * trackbacks(0)

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コメント

初めてお邪魔しました。グーグル検索で「菅原克己」・・・たどり着きました。菅原さんが亡くなられた病棟に勤務していたナースです。今は、保育園ナースしてます。先頃、友人の「おもしろ学校」で、各自の持ち寄ったCDを紹介ごっこ。そこで菅原克己さんの友人に会いました。その方が、高田渡さんのCDを紹介してました。学生時代、シュタイナー教育に憧れ、高田馬場でのシュタイナーの勉強会に足しげく通いました。そこで、子安美知子さん、ミヒャエル・エンデさん、イレーネ・ヨーハンゾンさんなどに会いました。
Comment by にんじん @ 2009/07/05 1:40 PM
にんじんさん、コメントありがとうございます。菅原さんの詩には以前から惹かれていましたが、どんな人なのかよく知りませんでした。高田渡さんの「ブラザー軒」という歌から、急に興味がわいてようやく菅原さんについて少し知ったぐらいです。にんじんさんは生前の菅原さんに病棟でお会いしたのでしょうか。どんな人だったのかな。シュタイナーについては、昔から勉強しているのにもかかわらず、まったく身についていません。さいきんはちょっとご無沙汰しています。じぶんの家の子育てにも自信がなく、シュタイナー教育で学んだものが生かせていません。猫に小判みたいな・・・。それにしても子安さんもエンデさんも、わたしは書物で知っているかぎりで、お会いしたこともなく、にんじんさんがうらやましいです。この夏にぼつぼつとシュタイナーをまた勉強したいと思っています。
Comment by mojabieda @ 2009/07/06 8:51 PM
コメントありがとうございます。人生は、螺旋階段を上がるように、忘れないで願い続けていると、出会うべき時に、ちゃんと出会えるものです。「モモ」を初めて読んだ時、この人に会いたい!!! と、願いました。そうして、会うことが出来ました。
Comment by にんじん @ 2009/07/21 9:42 PM
追伸☆あちこち、拾い読みして、びっくり!高田渡さんのCDを紹介していた菅原さんのお友達・・・筑摩で高校の国語の教科書作っていたそうです。ひょっとして、mojabiedaさんと会っていたかも!?私のシュタイナー教育のおすすめの本(本人の著作ではありませんが・・・)「自己教育の処方箋」おとなと子どものシュタイナー教育 高橋巌 著 角川書店(出版年 平成10年)
Comment by にんじん @ 2009/07/22 11:28 PM
おまけ☆そうそう、アーサー・ビナードさんの「Web日本語 日本語ハラゴナシ」に、こんな催しが紹介されてましたよ〜。8月29日(土)宮城県仙台市:講演会「詩『ブラザー軒』のある街で 詩人、菅原克己を語る」
Comment by にんじん @ 2009/07/22 11:50 PM
にんじんさん、コメントありがとうございます。人生は螺旋階段を上がるようなものなんですね。向こうからやってくる、という感じなんでしょうか。でもじぶんから上がって行かないといけないんですね。「自己教育の処方箋」は家にあるかもしれません(不勉強で)。探してみます。ビナードさんのホームページ見ました。丹精を込めたページですね。仙台まではとても行けませんが、いつかまた講演を聴きたいと思っています。
Comment by mojabieda @ 2009/07/24 8:17 AM
自分のアンテナでいかにキャッチできるか!かなぁ?それに、便りを書くと案外、返事をいただけることがあるものです。私は、国語教育の大村はまさん、書家の相田みつをさん、詩人の石垣りんさん・・・お返事をいただいたことがあります。(私はS県出身。東京・深川からS県に縁故疎開した母から、清水の空襲の話を聞きました。母は、アンネ・フランクさん、アルフォンス・デーケンさん、松谷みよこさんたちと同世代です)そのうち焼津で、アーサー・ビナードさんの講演会があることでしょう?!
Comment by にんじん @ 2009/07/24 11:50 PM
私の螺旋階段のイメージは、上がるというより、エッシャーの不思議な絵のようなイメージです。何度もお邪魔しまして、お返事もいただきありがとうございました。
Comment by にんじん @ 2009/07/24 11:57 PM
あっ、もう一言。「げんげ忌」調べてみて(*^^)v 
Comment by にんじん @ 2009/07/25 12:02 AM
にんじんさん、コメントありがとうございます。しばらく出かけておりました。また今日も出かけます。わたしもS県の人で、島田市に落ちたパンプキン爆弾のすぐ近くの生まれです。ビナードさんの講演は1度焼津でお聴きし、仲間といっしょに飲みました。隣りにビナードさんがいてお話をうかがいましたが、とても気さくな方でした。日本語の造詣がほんとうに深く、落語のような愉快なお話をしてくれました。「げんげ忌」調べてみました。なんと高田渡さんがそのときに飛び入り?でやってきてギターを弾いて歌ったこともあるそうですね。菅原さんをめぐって、こんなふうに人と人とがいろいろな縁でつながっているというのはおもしろいですね。
Comment by mojabieda @ 2009/08/01 7:35 AM
長らくお邪魔いたしました。ご丁寧なコメントありがとうございます。ネットは、怪しいところに出くわしてしまうこともありますが、信頼できる素敵な情報にめぐりあうこともありますよね。mojabiedaさんの「素敵な話」に出会って楽しかったです。ありがとうございました。昔、どこかの新聞記事で、菅原さんの奥様とアーサー・ビナードさんが、「げんげ忌」でお会いしたような・・・そんな記憶がおぼろげにあるのですが・・・?そうそう、高校生やMさんにおすすめ「自分を好きになる本」パット・パルマー 著、eqPress 訳、広瀬弦 画 径書房(1991年)(もし、まだ読んでいなかったら、おすすめです。ナースの先輩より)
Comment by にんじん @ 2009/08/05 9:14 PM
おいとま・・・と、何度も思いながら、ふと、思い出して、もうひとこと。「デモドリ、アントロポゾフィー」ミヒャエル・エンデの言葉です。行ったり来たり。いろんな世界を行きつ戻りつ、忘却が、短絡して、新たな発想や創造性を創り出してくれるのだと思います。
Comment by にんじん @ 2009/08/08 1:40 AM
にんじんさん、コメントありがとうございます。ようやく「夏休み」に入ることができました。とはいえ、さいきんはケータイやパソコンで仕事のつづきを家でします。連絡調整・印刷物の校正・意見交換など。完全な休みにならない時代になって口内炎もなかなかなおりません。「自分を好きになる本」は未見です。アマゾンで探してみます。わたしもシュタイナーやドイツ語の世界と行きつもどりつの「デモドリ」です。さいきん「教員免許更新」の講座をネットで受講して分かったことは、1日遅れると次の日の負担が二倍になるということで、最初にいくら量をかせいでも、それで安心すると後で困る、つまるところ「うさぎ」ではなく「かめ」がいいということ。行きつもどりつしながら、ちょっぴりずつ進んで行ければいいですね。
Comment by mojabieda @ 2009/08/08 7:14 AM
「詩人・菅原克己を聴く」
8月23日(日)17〜19時
東京・駒込駅東口左へ1分
「駒露地」左折
琉球センター・どぅたっち
お話と朗読 野上龍彦さん
(編集者・菅原克己全集編集に関わる)
予約 1800円(ワンドリンク付き)
Comment by にんじん @ 2009/08/13 6:34 PM
上記、詳しくはこちらをご覧ください。
琉球センター・どぅたっち
http://dotouch.cocolog-nifty.com/blog/2009/08/post-1b6e.html
Comment by にんじん @ 2009/08/13 8:27 PM
「文芸埼玉」第79号を読んでいて栗原澪子さんという方が菅原克己先生のエッセーで埼玉文芸賞を授賞なされているのを知りました。
昭和36、7年の頃でしょうか?当時の詩人の方が生徒を新聞広告で募集して「詩の教室」を開いて下さいました。神楽坂の幼稚園で確か木曜日だったと思います。
菅原先生はその中心でいらして、50代くらいと思われますが文学青年のような風情で素朴でやさしい、そんな印象でした。生徒さんは20代が多く荒川洋二さんもいらしたような、今は皆さんも70代位になられたと思いますがどうしていらっしゃるかしら・それにしても、菅原先生の詩はいいですね〜。是非、全集をもう一度読んでみたいです。
げんげ忌もいきたいです。
Comment by れいこ @ 2009/11/27 4:05 PM
れいこさんコメントありがとうございます。わたしはあまり詩には詳しくないのですが、菅原さんの詩はいいですね。栗原さんも荒川さんも存じあげないのですが、これからちょっといろんな方の詩を読んでみたいと思います。詩のある生活というのを、ずっと忘れていたような気がします。
Comment by mojabieda @ 2009/12/02 7:24 AM
栗原澪子さんのお嬢さんが詩人の木坂涼さん?ちがったかな〜?(木坂涼さんの夫は、アーサー・ビナードさん)明日は、木坂さんとアーサーさんのお話を聴きに行ってきまーす。この本もよかった。「シュタイナー 生命の教育」高橋巌 角川選書 2009年発行
Comment by にんじん @ 2010/01/17 11:43 PM
ビナードさんの奥さんは木坂涼さんというのですね。詩人なんですね。さいきんはシュタイナーはずいぶんご無沙汰しています。いままた高田渡さんがテレビで紹介されています。
Comment by mojabieda @ 2010/02/07 11:28 AM
今朝、久しぶりにお訪ねして、コメントを戴いていたのに気づき、再放送「高田渡」さんを拝見出来ました。2月14日に調布でアーサー・ビナードさんの講演会「青空をみようじゃねえか」お住まいの板橋から自転車での登場でした。講演会の後、もしよかったら・・・と、ビナードさんが、「菅原さん宅跡辺りまで散策をします」と、声をかけてくださって、20名くらいぞろぞろと歩いてご一緒致しました。その時にも、高田渡さんのテレビ放映があると、話題が上がっていたのに、忘れてました。教えていただきありがとうございました。木坂涼さんは、本名は「すずし」さんとお読みするそうです。
Comment by にんじん @ 2010/02/24 6:53 AM
ビナードさんといっしょに菅原さん宅あたりを散策したんですね。うらやましいです。わたしは高田渡さんのテレビ放送の最終回を観のがしてしまいました。だじゃれではないですが、三重県津市の「高田」にはこの前行きました。風情のある昔風の町です。
Comment by mojabieda @ 2010/02/27 7:39 PM
高田渡さんの最終回の再放送は、3月3日(水)午前5時35分〜6時です。雑誌も販売されてます。NHK 知る楽 こだわり人物伝」NHKの毎月の語学雑誌と同じ棚にありました。
Comment by にんじん @ 2010/03/02 12:37 AM
にんじんさんありがとうございます。こんどはしっかり観てみます。
Comment by mojabieda @ 2010/03/02 10:25 AM
新しいページになって、コメントが出来ませんでした。また、元に戻りました?げんげ忌に行ってきました。100人以上集まっていたらしいです。柔らかな空気の漂う素敵な会でした。5月1日「子どもの本・九条の会」二周年の集い(東京)があります。700人以上入る会場のチケットの売上に苦慮してます。どなたかいらっしゃれそうな人・・・おいでください。アーサー・ビナードさんの講演会もあります。http://love.ap.teacup.com/kodomono/
Comment by にんじん @ 2010/04/23 6:31 AM
にんじんさん、こんにちは。ページがとつぜんへんになったので、一時期テンプレートを変えました。また元にもどしました。げんげ忌は4月の第1土曜日でしたっけ?5月1日は地元のメーデーに家族で参加する予定です。東京はちょっと遠いのですが、いろいろブログに転送させてもらいますね。
Comment by mojabieda @ 2010/04/24 8:39 AM
2011年 「げんげ忌」では、栗原澪子さんがお話される予定のようです。詳しくは、西田書店に問い合わせると教えていただけるそうです。東京 南青山の喫茶店 エルグレコ(青山ツインビル:新青山ビル 地下1階)に菅原克己さんの全詩集の表紙の絵が飾られています。
Comment by にんじん @ 2011/02/13 9:28 PM
2011年 忌日に世話人会の有志で墓参りをすることで、「げんげ忌」は地震や原発事故を鑑み、中止になったそうです。
Comment by にんじん @ 2011/03/20 11:16 PM
お久しぶりです。お元気ですか?
下記に伺います。
お会いできるでしょうか?

○2012年 8月25日(土)13:30〜16:00
焼津市 市民文化センター 小ホール
ビキニ市民ネット10周年記念のつどい
第1部:島田興生スライドトーク(島田興生、名取弘文)
       水爆の島マーシャルの今

第2部:ビキニ事件60年へ、(討論会)
  報告:木村 力さん(『静岡新聞』記者 「心の航跡」取材から10年
  対談者は島田興生、飯田 彰、他、自由参加
コーディネータ:加藤一夫


Comment by にんじん @ 2012/07/30 6:09 AM
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