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週刊金曜日と高田渡



 『週刊金曜日』の9月5日号(717号)について語らねばならない。

 表紙がなんと高田渡。特集が「高田渡を語る」(井上陽水・小室等・森達也)。しかも沖縄の詩人・山之口貘の娘さんの山口泉さんのインタビューもある。

 この特集を読んで意外だったことは、高田渡が北海道で亡くなって東京に着いたとき、空港に迎えに行ったのが井上陽水だったこと。

 高田渡と井上陽水では陽水の方が年上だろうが、ぜったいそうは見えない。高田渡は老成して仙人のようだ。仙人になった高田渡の歌を一度聴けばだれもが「やみつき」になるだろう。その声と姿から立ち現れる存在感に圧倒される。輪郭がはっきりしている。すっきりと奥行きのある声。温かでゆるぎがない。

 またまた今日、菅原克己の「ブラザー軒」を読んだ。きのうは高田渡の歌う「ブラザー軒」をユーチューブで聴いた。1999年、たぶん東京日比谷公会堂のライブ。

 そうして思い出した。死んだ母親はわたしが大学から帰ってくると、しんぶんの囲碁コラムを(毎日切り取って)束ねておいたものをくれた。わたしは下宿にもどってそれをスクラップブックに貼り付けた。そんなスクラップブックがたくさんたまって、いまも倉庫に眠っている。どんな思いで毎日切り取ってくれたのだろう。もう遠い昔の思い出になってしまった。

 ユーチューブで観て聴く「高田渡 高田漣/ブラザー軒 1999年」の仕舞いごろ、いまは亡き高田渡がいっしょに公会堂で演奏している息子の漣をなにげなく聴衆に紹介する、「高田漣です」。


 ブラザー軒    菅原克己

 東一番丁、
 ブラザー軒。
 硝子簾(ガラスのれん)がキラキラ波うち、
 あたりいちめん氷を噛(か)む音。
 死んだおやじが入って来る。
 死んだ妹をつれて
 氷水(こおりすい)喰べに、
 ぼくのわきへ。
 色あせたメリンスの着物。
 おできいっぱいつけた妹。
 ミルクセーキの音に、
 びっくりしながら
 細い脛(すね)だして
 椅子にずり上(あが)る。
 外は濃藍(のうこん)色のたなばたの夜。
 肥(ふと)ったおやじは
 小さい妹をながめ、
 満足気に氷を噛み、
 ひげを拭(ふ)く。
 妹は匙(さじ)ですくう
 白い氷のかけら。
 ぼくも噛む。
 白い氷のかけら。
 ふたりには声がない。
 ふたりにはぼくが見えない。
 おやじはひげを拭く。
 妹は氷をこぼす。
 簾(のれん)はキラキラ、
 風鈴の音、
 あたりいちめん氷を噛む音。
 死者ふたり、
 つれだって帰る、
 ぼくの前を。
 小さい妹がさきに立ち、
 おやじはゆったりと。
 東一番丁、
 ブラザー軒。
 たなばたの夜。
 キラキラ波うつ
 硝子簾の向うの闇に。



JUGEMテーマ:芸能


mojabieda * 音楽 * 00:43 * comments(6) * trackbacks(0)

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コメント

「週刊金曜日と高田渡」の記事について。

念のため、
作家で、2005年以降、《週刊金曜日》にも、
多数の書評や美術論を寄稿し、
また現在、毎月「テレビ評」を載せている
山口泉(1955年生まれ、男性)は、
まったく別人です。

(もしも、この記事が、
インタヴューに登場されている方の文章について
書かれているのだとした場合は、
「女性で、山之口貘の娘さんであること」を初めて知った、
という事態は、おそらく起こり得ないだろうと判断したため、
僭越ながら、お伝えしました)

Comment by 山口泉 @ 2008/09/30 6:36 AM
 山口泉さまへ。すみませんでした。わたしのはやとちりでした。『週刊金曜日』の書評等でなんどもお見かけするお名前と、このまえ『週刊金曜日』に掲載された山之口貘さんの娘さんのお名前とを、掲載号はちがいますが同じ『週刊金曜日』誌上という先入観から同姓同名だとは思いおよばず、ついうっかり同じ人なのだと勘違いしていました。
 以前、「人類がついに核戦争を避けることができるかもしれないという見通しにもとづいて生成される『希望』を、私は本当の希望とは考えない。核戦争は確実に起こるという認識、それによって人類はおそらく滅びるだろうという認識をもったうえで、しかも語ることのできる『希望』だけに、私は耳を傾けたい。たとえば核戦争に反対するというとき、あなたは何を根拠に、何を守るために、そうするのだろう。あなたは何を愛するのか。何によって、自分が立ち会ったこの世界に、あなたは価値を認めるのだろう」(『星屑のオペラ』)という文を読んで感銘を受け、お名前はそれ以来脳裏に刻んできました。
 ブログを訂正いたします。失礼いたしました。コメントありがとうございました。
Comment by mojabieda @ 2008/09/30 8:22 PM

山口泉です。
御丁寧なお返事と御訂正、まことにありがとうございます。

これは、ブログ主宰者mojabieda様の責任では、まったくありません。
事情を御存知ない方が、あの誌面をご覧になれば、
過去4年間の《週刊金曜日》への私の寄稿の頻度からいっても、
当然、起こり得る誤信であり、
にもかかわらず、なぜか、こうした混乱を避けるべき最低限の配慮
(たとえば、問題のインタヴュー末尾、
もしくは編集後記等に、
「この山口泉氏は、本誌にテレビ評を連載している作家の山口泉さんとは
別人です」との註記を入れる等)がなされていない、
その結果であると考えます。

事実、同誌のある「読者会」の方からも、
昨日、似たような反応がありました。
実際には、もっとはるかに多くの方が、
同様の誤解を持っておられることでしょう。

拙作を、80年代前半の旧作からお読みくださっているとのこと、
お礼申し上げます。
ここで『星屑のオペラ』を引かれ、お書きになっているとおり、
2005年以降の《週刊金曜日》への私のすべての寄稿のみならず、
過去に遡り、さらには今後の私の著作・発言に関しても、
この別人の「山口泉」氏のものと考える方が出てくる懸念があると、
私自身は危惧しております。

また、『星屑のオペラ』をお読みいただいているとすれば、
お分かりいただけると思うのですが、
「血縁」「親子関係」「家族制度」に対する、
私自身の30年来の批判的視点からも、
私が、もしも高名な詩人の子どもであったとしても、
今回のような趣旨・内容でのインタヴューを受けることは、ありません。

私は誰かの「係累」としてでなどなく、
あくまで、自分自身の思想と言論によって立ちたいと考えてきました。
その意味でも、こうした誤信が広まることは、
大変、不本意です。

以上のような観点から、
目下、《週刊金曜日》編集部との協議を申し入れているところです。
私としては、誠実な対応がなされることを望んでいます。

私の経歴と著書、近年のマスメディア上の著述活動につきましては、
私自身のウェブサイト『魂の連邦共和国へむけて』
 http://www.jca.apc.org/~izm/
で御案内しております。

mojabieda様には、引き続き、
経過を見守っていていただければ
幸いです。

Comment by 山口泉 @ 2008/10/10 9:10 AM
 山口泉さま、コメントありがとうございます。

 直接、ご本人さまからのコメントのご指摘、いまも恐縮しております。もしご指摘がなければ、ずっと誤解をしていましたし、訂正前のわたしのブログを読んだ人も、たぶん誤解したかもしれません。

 わたしももう少しきちんと調べてからブログ記事を書くべきだと反省しました。

 また、読者のこういう誤解の可能性への配慮を『金曜日』もきちんとしなければならなかったとわたしも思いました。

 『金曜日』へは、このような誤解の例があるということでmojabiedaの例をとりあげてください。

 山口さまのウェブサイト『魂の連邦共和国へむけて』にもときどきお邪魔させてください。
Comment by mojabieda @ 2008/10/13 7:58 AM
 山口泉です。

 重ねての御丁寧な御返事、
 まことにありがとうございます。

 今回の不本意極まりない事態のなかで、
 mojabieda様の、一貫して率直で、誠意に満ちた御対応は、
 私にとって、大変、嬉しいことです。

 むしろ、mojabieda様が、こうした記事をお書きくださったことで、
 私の当初からの懸念が、最初に裏付けられ、
 問題を明らかにするきっかけを得たのだと、私自身は考えております。

 この件に関しましては、現在、
 《週刊金曜日》編集部への対応を申し入れているほか、
 本日から、私自身のウェブサイトでも、暫定的に告知を始めたところです。

 今後とも、どうぞよろしくお願いいたします。

Comment by 山口泉 @ 2008/10/15 1:37 PM
 山口泉さま、たびたびのコメントありがとうございます。

 ウェブサイトの「急告」拝見しました。誤解した人はやはりわたしだけではなかったのですね。

 それでわたしも週刊金曜日の編集部あてにメールしました。誤解した読者がここにも一人いることを実証するためです。

 さらに、潜在的な誤解者が全国にたくさんいらっしゃるおそれがあるため、きちんと別人物であることを、後からでも、なんらかの形で読者へ知らせるべきだという主旨のメールです。

 わたしにできることはそのくらいですが、この間のわたしの「はやとちり事情」をまとめてざっくばらんにこのブログの記事にしてもよろしいでしょうか。

 こちらこそ、今後とも、よろしくお願いします。
Comment by mojabieda @ 2008/10/18 8:27 AM
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